
葉の切れ込みが深く、穴が少ないモンステラを店頭で観察|ボルシギアナなのか?

ホームセンターの植物売り場を見ていると、ときどき気になるモンステラがあります。
葉にはしっかり切れ込みが入っている。それなのに、葉の内側の穴が少なく見えるモンステラです。
まだ小さな幼苗なら特に不思議ではありません。しかし今回見かけた株は、支柱に登らせるように仕立てられ、葉にもかなり深い切れ込みが入っています。
注目したのは、切れ込みの深さに対して穴が少なく見えることです。
しかも、このタイプは今回だけではなく、ホームセンターなどでたまに見かけます。
タグには単に「モンステラ」と書かれていることもあれば、別の流通名が付いていることもあります。
では、この「割れるのに穴が開かないモンステラ」は何なのでしょうか。
名前の確認と観察の範囲
| 植物学上の受容名 | Monstera deliciosa Liebm.(以下の名称関係を説明する対象種) |
|---|---|
| 科・属 | サトイモ科・モンステラ属 |
| 種の原産域 | メキシコのベラクルス・オアハカ・チアパスからグアテマラ |
| ボルシギアナの扱い | M. borsigianaとM. deliciosa var. borsigianaはPOWOでは同種のシノニム |
| 写真で確認できること | 深い葉縁の切れ込み、内側に穴のある葉と少ない葉、支柱に沿う仕立て |
| 未確認 | 店頭株の系統名、購入後の成長、将来すべての葉がどう変わるか |
名称と種の分布はKew POWOのMonstera deliciosaを参照。名称の整理から、店頭株の系統まで特定できるわけではありません。
写真を読むうえでの補足:掲載写真には、内側に穴のある葉も写っています。「撮影した株全体に穴が一つもない」とする説明は正確ではないため、ここでは切れ込みと穴の出方に注目した店頭観察として整理しています。
葉の切れ込みと、内側の穴を分けて見る

今回ホームセンターで撮影したのがこの株です。
葉の縁から中央方向へ深い切れ込みが入り、いかにもモンステラらしい葉になっています。
ところが、よく見ると葉の内側の穴は、写っている葉によって数や形が違います。
モンステラは幼株では切れ込みも穴もない全葉を出します。その後、株が成熟して葉が大型化すると、切れ込みや穴を持つ葉を展開するようになります。
そのため、単に「穴がない」というだけなら珍しいことではありません。
今回気になったのは、すでにかなり深く葉が割れている一方、穴が少ない葉も見られることです。
こういうモンステラをホームセンターでたまに見る

この株だけが特殊なのかというと、そうとも思えません。
植物売り場を見て回っていると、同じように「葉の切れ込みが深い割に、穴が少ない」モンステラをたまに見かけます。
そして、さらにややこしいのが販売時の名前です。
タグに単純に「モンステラ」としか書かれていないものもあります。
一方で、通常のモンステラとは違う名称が付けられて流通しているものを見かけることもあります。
ただし、園芸流通名だけを見て植物学的な種類まで判断するのは難しいところです。
もしかして「ボルシギアナ」なのか?
こうしたモンステラを見ると、ひとつ思い浮かぶ名前があります。
モンステラ・ボルシギアナ(Monstera borsigiana)です。
園芸では昔から「デリシオーサ」と「ボルシギアナ」を分けて扱うことがあり、ボルシギアナは比較的コンパクトで、つる性が強いタイプなどとして説明されることがあります。
しかし、現在の植物分類では事情が違います。
KewのPlants of the World Onlineでは、Monstera borsigiana は独立した受容種ではなく、Monstera deliciosa のシノニムとして扱われています。
Monstera deliciosa var. borsigiana についても、受容名は Monstera deliciosa です。
つまり、園芸では現在でも「ボルシギアナ」という名前を見かけますが、現在の分類上「デリシオーサとは別種のボルシギアナ」と単純に分けることはできません。
ボルシギアナなら穴が開かないわけでもない
さらに、「穴が開かないからボルシギアナなのでは?」と考えるにも問題があります。
ボルシギアナと呼ばれて流通してきたタイプでも、成熟すると葉に穴が開くことがあります。
つまり、
- 葉が割れる
- 穴が開かない
- 登るように成長する
といった特徴だけから、「これはボルシギアナ」と断定することはできません。
少なくとも「ボルシギアナ=穴が開かないモンステラ」ではないと考えた方がよさそうです。
支柱に沿う株でも、葉ごとに姿が違う

今回の株で特に気になったのはここです。
モンステラは登る場所を与えて育てることで葉が大型化し、成熟した葉へ変化していきやすい植物です。
今回の株も登らせるように仕立てられていて、実際に葉の切れ込みはかなり発達しています。
その一方で、穴が少ない葉もあります。
もちろん、このあとさらに成熟すれば穴のある葉を出す可能性もあります。
また、同じ Monstera deliciosa の範囲でも、個体差や栽培環境、成熟度などによって葉の形には違いが現れます。
写真だけを見て、この株が一般的なデリシオーサと遺伝的に異なる系統なのか、それとも単に現在の成長段階で穴が形成されていないだけなのかまでは判断できません。
タグだけで正体を決めない方がよさそう
ホームセンターでは、生産者や販売店によってさまざまな名前でモンステラが販売されています。
「モンステラ」という大きなくくりだけのタグもあれば、園芸上のタイプ名や昔から使われている名称が付いていることもあります。
特に「ボルシギアナ」のように、園芸では現在も使われる一方、現在の分類ではシノニムになっている名前もあります。
そのため、タグに書かれた名前と現在の植物分類は分けて考えた方がよさそうです。
穴が少ない葉を持つモンステラとして観察する
今回の株については、写真だけから品種や系統を断定することはできません。
ただ、ホームセンターを見ていると同じような株をたまに見かけるというのは面白いところです。
今回の注目点は、葉の切れ込みが発達していても、内側の穴の数には葉ごとの差があることです。
そして、ボルシギアナと呼ばれるタイプなら必ずこの姿になるわけでもありません。
こういう株を見つけたら、タグの名前だけでなく、葉の大きさ、切れ込み、穴の有無、節間や成長の仕方まで見比べてみると、モンステラの面白さがさらに分かります。
別の店頭株では茎の細さも気になりました。穴の少なさと茎の太さを見比べた記録と合わせると、葉だけで名前を決められないことが分かります。
まとめ
ホームセンターでときどき見かける、葉の切れ込みが深く、穴が少ない葉も見られるモンステラ。
「ボルシギアナなのでは?」という可能性を考えたくなりますが、現在 Monstera borsigiana は Monstera deliciosa のシノニムとして扱われています。
さらに、ボルシギアナと呼ばれてきたタイプでも成熟した葉に穴が形成されることがあるため、穴の有無だけでは判断できません。
今回の株が単なる成長段階によるものなのか、流通している特定のタイプなのかは写真だけでは断定できません。
ただ、ホームセンターで同じような姿の株をたまに見かけるので、今後も見つけたらタグや葉形を記録して比較してみたいと思います。









