
モンステラ・オブリクアの種類|ペルー・ロレト・タポ・ジャイアントを実株比較
「モンステラ・オブリクア」と聞いて、多くのアロイド好きが最初に思い浮かべるのがオブリクア・ペルー(Monstera obliqua ‘Peru’)ではないでしょうか。
葉より穴のほうが多いのでは?と思うほど大胆に穴が入り、薄い葉がレースのように広がる独特の姿。
かつて非常に高価な希少植物として知られ、世界的なレアアロイドブームを象徴する存在のひとつとなった植物です。
ところが、オブリクアを集めていくと気付くことがあります。
「オブリクアって、ペルーだけじゃない。」
実際には、Loreto(ロレト)やTapo(タポ)などの名前で流通するフォームがあり、同じMonstera obliquaとは思えないほど葉姿が違うものもあります。
今回は実際に育てている株を使って、オブリクア・ペルーをはじめ、Peru Giant、Loreto、Tapo、産地不明のobliqua sp.まで紹介します。
オブリクアの種情報と、この記事の流通名
次の表は、本文で育てているPeru名の株と比較用マドカズラの見え方を整理したものです。種を確定するための検索表ではありません。
| 学名 | Monstera obliqua Miq./サトイモ科モンステラ属 |
|---|---|
| 自然分布・成長型 | コスタリカから南米熱帯域、トリニダード。湿潤な環境の登攀植物 |
| Peru・Loreto・Tapoなど | 本文では入手時の名前。独立した種・変種の一覧ではない |
| Peru Giant | Giant Form名で入手した株。巨大化の程度を今後観察 |
| 産地不明株 | 「obliqua sp.」は入手時表記として残す。正式な学名の書式や産地の保証ではない |
分類・分布・形態の出典はKew POWOのMonstera obliquaです。同資料に掲載された形態解説では、穴のない葉も扱われています。以下の流通株を、名前と葉の穴だけで同定したものではありません。
種類を見比べた後は、エクスピラータ名で入手した株の伸び方やマドカズラとの葉の比較もご覧ください。
そもそもMonstera obliquaとは?
Monstera obliquaはサトイモ科モンステラ属の一種です。
「オブリクア=ペルーの植物」という印象が非常に強いのですが、種としてのMonstera obliquaはペルーだけに存在する植物ではありません。
中米から南米北部・中部にかけて広く分布し、その自生域の広さもあって葉の形には大きな変異があります。
つまり、私たちがよく知る「穴だらけのオブリクア・ペルー」は、オブリクアという種が見せる姿のひとつ。
ここからがオブリクア沼の入口です。
オブリクア・ペルー|レアアロイドを象徴する存在

まずはMonstera obliqua ‘Peru’。
「オブリクア」という名前を世界中の植物好きに知らしめた、あまりにも有名な存在です。
極端に大きな穴が入り、成熟すると葉身よりも空間のほうが目立つほど。非常に薄い葉と繊細な葉姿は、一般的なモンステラとはまったく違う雰囲気があります。
一時期は本物のオブリクアが非常に高価だったこともあり、マドカズラ(Monstera adansonii)などが「オブリクア」として販売される混同も多く見られました。
現在では以前より入手しやすくなりましたが、オブリクア・ペルーがレアアロイドブームを象徴した存在であることに変わりはありません。
さらに希少な「オブリクア・ペルー ジャイアント」

そしてこちらがMonstera obliqua Peru Giant Formの名前で入手した株。
通常のオブリクア・ペルーとは別に「Giant Form」「Peru Giant」などの名称で扱われることがあるタイプで、私が入手時に珍しいと感じた株です。国内全体の流通量を調査したものではありません。
ただし「Giant」は植物学上認められた変種名ではありません。
そのため当サイトでは、正式な分類群としてではなく、「Peru Giant Formの名称で流通・入手した系統」として紹介します。
こうした入手時の名前を記録した株を実際に育て、成長による葉姿の変化を記録していくのもアロイド栽培の面白さです。
オブリクア・ペルーが突然「ヒモ」になる? ランナーの正体

オブリクア・ペルーを育てていると、突然こんなものが伸びてくることがあります。
これが「ランナー(stolon)」です。
我が家の株も見事にランナーを出しました。
普通の茎であれば、節を作りながら葉を展開して成長していきます。
ところがランナーになると、葉をほとんど展開せず、節間を大きく伸ばしながら細長い茎だけがどんどん進んでいきます。
ただ徒長しているわけではありません。
野生環境では、今いる場所から伸び出して次に登ることのできる木や新しい生育場所を探すための探索的な成長と考えると非常に分かりやすいです。
実際、Monstera属を詳細に研究したMichael Madisonの記載でも、M. obliquaの通常の成株の節間はおよそ1~6cmなのに対し、stolonでは10~30cmになるとされています。
葉を作りながら育つ茎と、次の場所を探すランナー。
同じ株が目的によってまったく違う姿の茎を作るわけです。
「せっかく大きな葉が出ていたのに、急にヒモになった……」と最初は焦りますが、これもオブリクア本来の生態のひとつ。
しかもランナーにも節があるため、増殖に利用することもできます。
Monstera obliqua ‘Loreto’|アマゾンのロレト地方

次はオブリクア・ロレト(Loreto)。
Loreto(ロレト)は、ペルー北東部に広がる巨大な地域です。
イキトスを中心とするアマゾン熱帯雨林の世界で、広大な低地熱帯林と河川環境を抱えています。
そして興味深いことに、Loretoは単に園芸植物に付けられた格好いい名前というだけではありません。
実際にペルー・Loretoで採集されたMonstera obliquaの植物標本が残されています。
Field Museumの標本S. R. King 462には、ペルー・Loretoで1982年5月12日に採集された記録があります。ただし、この標本は我が家の「Loreto」株の採集地や系統を証明するものではありません。
園芸市場ではLoretoの名前を持つフォームが流通しており、私が育てている株も「Monstera obliqua Loreto」として入手したものです。
有名なPeruだけを見ていると「オブリクア=穴だらけの小さな葉」という印象になりますが、別フォームを育ててみると、そのイメージはかなり変わります。
Monstera obliqua ‘Tapo’|情報の少なさも面白い

こちらはMonstera obliqua ‘Tapo’の名称で入手した株です。
PeruやLoretoと比べても国内で目にする機会が少なく、情報そのものが非常に少ないフォームです。
ここで注意したいのが「Tapo」という名前。
リージョンフォームとして流通している名称ではありますが、現在確認できる植物学的資料だけでは、流通しているTapo系統と具体的な採集地点・由来を確実に結びつけることが難しい部分があります。
そのため「この地域で採集されたからTapo」と断定するのではなく、当サイトではTapoの名称で流通しているオブリクアの一系統として扱います。
こうした情報の少なさも、希少アロイドを集める面白さのひとつ。
今後この株が成熟してどのような葉を展開するのか、引き続き記録していきたいと思います。
産地不明でも強烈|Monstera obliqua sp.

こちらはMonstera obliqua sp.として育てている株。
産地名やリージョン名は付いていませんが、とにかく穴が多い。
こうした株を見ると、Monstera obliquaという植物が「Peruという一つの完成された葉型」ではないことがよく分かります。
同じ種の中でも葉形や穴の入り方には大きな変異があり、産地情報のない株にも非常に面白い個体があります。
逆に言えば、「穴が多いからPeru」「穴が少ないからオブリクアではない」と単純には判断できません。
オブリクアという種そのものが、かなり変異に富んだモンステラなのです。
オブリクアとマドカズラは何が違う?

オブリクアを語るうえで避けて通れないのがマドカズラ(Monstera adansonii)です。
どちらも葉に穴が開くため、特に小さな株では混同されることがあります。
しかし実物を触って比べると印象はかなり違います。
代表的なオブリクア・ペルーは葉が非常に薄く繊細で、大きな穴によって葉身が細い帯のように残ります。
一方、マドカズラは一般に葉により厚みと存在感があり、穴が多い個体でも葉身がしっかり残ります。
さらにオブリクアでは、今回紹介したような長いstolon(ランナー)を形成する性質も重要な観察ポイントになります。
次の表は、本文で育てているPeru名の株と比較用マドカズラの見え方を整理したものです。種を確定するための検索表ではありません。
| 比較 | オブリクア・ペルー | マドカズラ |
|---|---|---|
| 葉 | 非常に薄く繊細 | 比較的しっかりしている |
| 穴 | 代表的Peruでは極端に大きい | 穴が多くても葉身が比較的残る |
| 見た目 | レース・骨格のような印象 | 葉の中に窓が開く印象 |
| ランナー | 長いstolonを形成する | 本文の比較株ではPeruのような長いランナーは目立たない |
| 流通 | 現在もコレクター向け | 一般園芸店でも広く流通 |
ただし、オブリクアにはPeru以外にもさまざまな葉型が存在します。
そのため穴の数だけでオブリクアとマドカズラを判定するのは危険です。
「オブリクア=ペルー」ではなかった
オブリクア・ペルーは、今でも特別な植物です。
大胆な穴あき葉、薄く繊細な葉質、そして突然伸び始めるランナー。
アロイド好きなら一度は育ててみたくなる魅力があります。
しかし、その先にはLoreto、Tapo、Peru Giant、さらに産地名の付いていない個性的なobliqua sp.まで存在します。
ペルーを育てて終わりではなく、ペルーから先がオブリクア沼。
同じMonstera obliquaという名前を持ちながら、これだけ違う姿を見せるところが、この植物の最大の面白さなのかもしれません。
今回紹介した株については、成長して葉姿が変化したら今後も追記していきます。
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